1991年、Filofaxの輸入元からの独立を機に制作に没頭したダイアリー手帳Cookday
このCookdayを全国の百貨店/専門店へ紹介するにあたり、
ブランドのイメージをバイヤーに伝えるために作った企画書の一部(原文)をご紹介させて頂きます。
四季をイメージして制作したCookdayをお使い頂いている皆様に一読して頂き、
心の片隅に残してくだされば幸いです。

 


Cookday 制作にあたり  ブランドイメージについて ー


春は苦み。
蕗のとう、わらび、ぜんまい、せり、さざえなど、
春はほろ苦いものが美味しくなる。
この苦みは材料の持ついわゆる持ち味をいかすほかはない。
しいていえば苦みをいかすのは、
ほんのりした甘さ、これがよく合うのである。

夏は酸味。
夏みかんをほぐして加えるとか、レモンを絞って垂らすとか、
酸のたつ物を使いさらりと仕上げることが料理のポイントであろう。
酢の物は夏料理に欠かさぬものである。

秋は滋味。
さわやかな味である。牡蠣、秋刀魚、すだち、かれい、新米、秋なす、松茸、しめじ、栗など、
材料にあまり手を加えず、素直にそのものの味を生かして食べるのが秋の特徴であろう。
「水の滋味、包丁の冴え」という言葉があるように、この滋味を生かす基本は水である。
本来の良さである日本の清水を使う、鯉のあらい、豆腐をはじめ、水でさらす野菜料理などは、
この水を生かした日本独特の料理である。

冬は甘味。
白味噌仕立ての汁、鍋物、ふろふき大根、味噌田楽など、寒いときは甘味の勝ったものが好まれる。

この4つの味の他にもう1つ大切な味がある。
渋味である。
渋味は本来、中国のお茶の味で油っこい中華料理と違い、極めて淡白な日本料理にとって、
この中国茶の味は苦すぎて口に合わないため、そこに甘味を加えて開発されたのが渋味である。


料理は、出汁を決め味を作り、一つの皿を完成させることにある。
味作りを料理だけで独占せずに、
色彩の味、音楽の味、街の味、会社の味、旅の味、そして人の味。
そのすべての味を日々生活の場であるキッチンに置きえ、
行動それぞれが自分の味を作る料理だと思ってみてはいかがだろう…。


終わりに、
いつかあなたが味にうるさい人と言われることを願い、
Cookdayより極めつけをご紹介いたしましょう。

 


【イナゴの網焼き 洗礼者ヨハネ風】
Sauterelles grillées à la mode de Saint Jean-Baptiste le Précurseur


たくさんのイナゴの中から、茶色や黄色のやつでなく、
ピンク色の美しいのを選び出す。
金網の上に選んだイナ ゴをのせ、荒塩2〜3つまみ振り掛けて炭火で軽く焼く。
ひっくり返して頭をむしり取り、内臓も全て抜き取る。
イナゴを皿に並べて、レモンの輪切りを添え て、塩、コショウ、唐辛子で味をつける。
この広野のイナゴを、英仏海峡のイナゴすなわち小エビよろしく、皮をむいて同じように食べる。
似た味がする。


「美食三昧 ロートレックの料理書」より
ロートレックは、「料理の創作はアートの創作と同じである」と考えていた芸術家らしく、
分量など入っていないざっくりとしたユニークな料理本で、とりわけ食材の指定が面白い。



1991年9月 AQDO 近藤 浩